草花には顔がある。とくにテンナンショウ属(サトイモ科)の仲間たちは、顔だちがはっきりしている。
そして上を向いたり、下を見ているような顔の表情が豊かである。
テンナンショウは林地や山地に生育している。4月から初夏にかけて、仏炎苞状の花をつける。仏炎苞は筒部と舷部に別れる。筒部には白い筋状の模様がある。舷部は、筒部の境目から折れ、イカの耳のような形をしている。
先端が尖った舷部は、種類によって下を向いたり、空を見上げている。
ミミガタテンナンショウは、茎に蛇紋があり、背丈は30センチくらいである。庇のように延び、流れるような舷部には、女性的な曲線美がある
頭部の流線形と筒部から出ている肉穂の形状と質感を写すために、逆光気味の光線で横顔を狙う。
同じ仲間で茎にマムシのような斑点があるマムシグサは、下向きの舷部が鋭い表情で迫ってくる。
那須辺りでヘビマクラと総称されているテンナンショウは、あまり好かれていないようである。しかし、わたしはテンナンショウの表情にひかれている。
信太 一高 |