家を一歩出ると旅の始まり。遠くの旅は大なる空想を生む。しかし近くの旅には発見がある。
那須の晩秋のある晴れた日、カメラを肩にぶらりと散策。家からだらだら坂を200mほど下ると銀杏屋酒店がある。敷地の南側に四季桜が咲いている。淡紅色の金平糖のような花を無数に付けている。紅葉が花の背景にくるアングルから見ると、季節感と花の色や形が鮮明になる。
芭蕉の句碑に寄り、愛宕山を経て、高久保育園前の牛魂碑に参る。肉牛飼育農家が食糧になる牛への感謝と鎮魂のために建立したものである。牛肉飼育農家の慈悲心を感じる。
牛頭観音や畜魂碑はときどきに見かけるが、牛魂費にはまだ二つしか出会っていない。
農家の庭先では、長い柄を付けたノコギリで柚子の実を取るジィさんや半割にした40Bほどの大根をゴザにに叩き付けて、漬け物の下ごしらえをするバァちゃんが、小春の陽を受けて、季節を愉しんでいるようだ。
晩秋の那須の里には、ゆったりとした風が流れている。
信太 一高 |