新雪のツキノワグマの左後ろ足跡。真新しいので爪跡もくっきり。
 
 
 12月上旬、那須連山を歩く。
 今朝降った雪が薄らと山道に積もっている。先行者はなし。峠の茶屋の鳥居付近に人間の足跡らしきものがある。『なあんだ、先行者がいるのか?」しかし足跡は人ではなくクマ!足跡は真新しく、足裏の温もりが伝わってくるようである。
 わたしの気配を感じ取って慌てたらしく、鳥居下の橋の脇から沢に飛び下りた形跡がある。
 左後ろ足跡の踵から中指爪先までの長さは、20B弱もあり、大型のツキノワグマである。
 例年ならとっくに冬ごもりの時期なのに、暖冬の影響で遅れているのであろうか。しかし米田一彦著『山でクマに会う方法』によると、栄養状態が良く、体力のあるクマは動き回って、冬ごもりが遅いこともあるそうだ。
 剣ケ峰鞍部を過ぎた辺りで新たなクマの足跡がある。足跡に先導されるように山道を進む。
 朝日岳を経て熊見曽根ピークに至る。雪は少なく、樹氷や岩氷は生まれたばかりでまだ小さい。
 妙にクマの足跡が気になる初冬の山旅であった。
信太 一高